江戸時代の小説 | 通訳ガイドになるぞ☆

江戸時代の小説

今日は化政文学のうち、小説の代表作をまとめてみました。



洒落本:江戸の遊里の生活を描いたもの


山東京田 (さんとうきょうでん)=「仕掛文庫」(しかけぶんこ)/「通言総籬」(つうげんそうまがき)/「傾城買四十八手」


参考1:「通言総籬」は「江戸生艶気樺焼」の続きになっていて、同じ三人が登場し、吉原で一晩過ごす話。


参考2:「傾城買四十八手」は、傾城買い(けいせいがい:遊里で遊女を買って遊ぶこと)の様々な手を示すという手法で、それぞれのカップルが織りなすやりとりを、巧みに描き、それを作者が評している。うがち(遊里生活の案内・手引き)や洒落はほとんどなく、心理描写に重点をおいた作品。



黄表紙:江戸の風俗をうがち諷刺したもの。当初は「子供向けの英雄伝説」などがその内容だったが、だんだんと大人向け小説に変わっていった。黄表紙は何冊かまとめられると「合巻」(ごうかん)と呼ぶ。


恋川春町 (こいかわはるまち)=「金々先生栄華夢」(きんきんせんせいえいがのゆめ)

山東京伝「江戸生艶気蒲焼」(えどうまれうわきのかばやき)


参考1:「金々先生栄華夢」は「田舎から出てきた青年が金持ちの養子になり、放蕩して勘当される夢を見る話」。恋川春町は、「鸚鵡返文武二道」(おうむがえしぶんぶにどう)という作品を書いた。これは寛政の改革を風刺した作品であり、そのため恋川春町は弾圧された。


参考2:山東京伝は浮世絵師で戯作者。洒落本と黄表紙のジャンルで作品を残した。山東京伝の「仕掛文庫」は寛政の改革で処罰を受け、それ以後洒落本は衰退していった。



合巻(ごうかん):黄表紙を何冊かあわせて長編にしたもの。敵討ち物を中心に芝居の筋書きに影響を受けたもの。


柳亭種彦 (りゅうていたねひこ)=「偐紫田舎源氏」(にせむらさきいなかげんじ)


参考:「偐紫田舎源氏」は「源氏物語」を翻案してお家騒動を描いたもの。天保の改革で絶版にされた。



滑稽本:庶民の日常生活を軽妙な会話中心に風刺と笑いで描いたもの。洒落本の弾圧後に始まった。


十返舎一九 (じっぺんしゃいっく)=「東海道中膝栗毛」(とうかいどうちゅうひざくりげ)

式亭三馬 (しきていさんば)=「浮世風呂」(うきよぶろ)/「浮世床」(うきよどこ)


参考1:「十返舎一九」は神田に住む弥次郎兵衛が喜多八を連れて旅する珍道中を描いたもの。


参考2:「浮世風呂」は江戸庶民の社交場である銭湯を舞台に描いたもの。「浮世床」は髪結床に集まる庶民の姿を描いたもの。



人情本(にんじょうぼん):洒落本が衰退した後登場した恋愛小説。「泣本」(なきぼん)ともいう。


為永春水 (ためながしゅんすい)=「春色梅児誉美」(しゅんしゅくうめごよみ)


参考1:江戸深川の遊里を背景にした、色男をめぐって芸妓や許嫁(いいなずけ)たちが真心と意気地を尽くす話。「春色梅暦」と書いても良い。天保の改革で絶版になった。



読本:勧善懲悪(かんぜんちょうあく)・因果応報(いんがおうほう)をテーマにした歴史的伝奇小説。上記の絵入りの本の系統に対し、文章を読むことを主体とした小説。


上田秋成 (うえだあきなり)=「雨月物語」

滝沢馬琴 (たきざわばきん)(曲亭馬琴(きょくていばきん)ともいう)=「南総里見八犬伝」(なんそうさとみはっけんでん)/「椿説弓張月」(ちんせつゆみはりづき)


参考1:「雨月物語」は日本と中国の古典を翻案した怪奇小説集。


参考2:「南総里見八犬伝」は里美家のお家再興をテーマにした滝沢馬琴の代表作。


参考3:「椿説弓張月」は源為朝(みなもとのためとも)を主人公とした武勇伝。